今回は、当時の上海に咲いた2人の儚くも悲しい女性たちにスポットを当てていきましょう。
「閃光のナイトレイド」でも、苑樹雪菜が登場しますので、当時の女性スパイの社会的位置づけとともにみていきたいと思います。
まずは、鄭蘋茹(テンピンルー)から。
鄭蘋茹は、辛亥革命に身を投じ、中華民国建国に尽力した革命家を父に、日本人女性を母にもつ、日中ハーフの女性でした。
鄭蘋茹は、「閃光のナイトレイド」の舞台となる1931年に、上海のフランス租界に引っ越してきます。
鄭蘋茹は多感な時期を、反日感情盛り上がる中国で育つことになるのです。
革命家の父の血を受け継いだ鄭蘋茹の思いとは裏腹に、鄭蘋茹は日本の血を引く人間ということで、中国社会で阻害されてしまいます。
「自分は中国人である!」「中国社会で認められたい!」その思いから、鄭蘋茹はスパイ活動に身を投じていくのです。
うまれながらの美貌を生かし、対象者に近づき諜報活動をおこなう鄭蘋茹。
彼女は、日本側のスパイ組織のリーダーの暗殺に失敗、その際捕らえられ、わずか26歳の若さで処刑されるのです。(年齢は諸説あり)
もう一人は、男装の日本人女スパイ川島芳子です。
芳子は、清王朝の皇族の娘で、満州国皇帝溥儀とも血縁のある人物です。
清王朝は、芳子4歳の時に崩壊、日本に亡命した芳子は、川島家の養女になりますが、17歳で自殺未遂事件を起こした後、断髪し男装するようになりました。芳子は、一度は結婚するものの、間もなく離婚。1930年頃に上海に渡ってきます。
川島芳子の男装の風貌と清王朝出身という家柄は、マスコミの眼にとまることになり、芳子はメディアのアイドル的存在となっていきます。
このころより、芳子は諜報活動をはじめるようになったといわれています。
中国人であることの否定、女性であることの否定、これらの自己否定が、芳子を諜報活動へと走らせたのかもしれません。
芳子は、戦後間もなく、中華民国政府によって銃殺刑に処せられますが、その背景には、芳子の知り得た情報が漏れると、中華民国政府の支持が急降下すると考えられたからといわれています。
このように、当時上海を暗躍したスパイには、様々な思いを持ってスパイ活動に身を投じていったことがわかります。
さて、「閃光のナイトレイド」の登場人物たちは、どのような思いで、自らの身を諜報活動に投じていくでしょうか。
番組開始に向けて興味は尽きないところです。