歴史ナビゲーター・金谷俊一郎氏のワンポイントコラム

◆◇◆第12回


いよいよ高千穂勲が動き出しました。
高千穂の声明にもあるように、彼は欧米列強によるアジアの植民地支配からアジアを救いたい。そのためには、租界が多く設定された上海のような状況はもちろんのこと、今まさに進もうとしている、関東軍が満州国を支配するような状況でも何ら解決にはならないと考えたようです。
当時、石原莞爾の『満蒙問題私見』などに触発され、このように理想に燃えた若き人たちが存在したことは事実です。
しかし、実際の歴史では、満州において高千穂勲のような革命をおこすには至らず、彼らの思いは、関東軍による満州国の支配に利用されていったともいえるかもしれません。

さて今回、満州帝国の郊祭式典がおこなわれていましたが、郊祭式とは清国の伝統的な儀式で、天壇に上り玉印を受け取ることによって皇帝となる、いわゆる戴冠式的なものと考えていただければよいでしょう。
実際は、本編でも見られたように、関東軍だけがこの郊祭式典において、慇懃無礼ともいえる態度を取っていました。
そこからも、この皇帝就任が純粋に清王朝の系統をひく満州帝国としての儀式とはいえないことがわかります。

次に、あの黄色いかなりインパクトのある国旗を覚えてらっしゃるかと思います。あれは満州国の国旗です。国旗のベースは黄色というよりは、サフラン色で、これは清国の旗である「黄龍旗」のベースカラーと同じものです。サフランは今でも1kg10万円以上もする高価な香辛料であることから、ロイヤルカラーとも言われます。
国旗の左上には、赤、青、白、黒の横線が。赤は南方、青は東方、白は西方、黒は北方を意味し、もともとは中央行政で四方を統御するという意味があったのですが、いつの間にか、黄色が満州民族、赤が日本民族、青が漢民族、白がモンゴル民族、黒が朝鮮民族を表すとされ、国旗全体で「五族協和」という建国の理念が表現されたものという俗説が広まっていったといわれています。

ところで、今回のキーワードともなっている大同広場や、新京の国都建設計画、預言者による託宣が出された国務院についてなど、まだまだ書きたいことはいっぱいあるのですが、それらは、DVD発売時のブックレットでのコラムにその紙幅を譲ることにいたしましょう。

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